医療のIT化を考える-電子カルテによる業務効率化について

導入の進む「電子カルテ」の基礎知識
企業はもちろん、学校や家庭のあらゆる場面でITが導入されています。医療の現場も同様で、1999年、厚生省(現・厚生労働省)が医療情報の電子化を認めたことを皮切りに、「電子カルテ」を採用する病院やクリニックが増加。
さらに2001年、厚生労働省が「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」を発表し、国としても医療のICT化を検討する中で電子カルテの普及は必要だと考えています。そのような背景も手伝って、民間の調査会社によると、2020年の電子カルテ市場規模は2,780億円になるのではと予測されています。
電子カルテとは、患者の各種情報(生年月日、性別、病名など)をはじめ、処方、注射、処置内容、さらに検査などの画像情報といった医師の診療記録を、電子的に記録・保存・管理するもので、現在、診療情報を他の医療機関とネットワークで共有するための標準化が進められています。
なお、電子カルテ導入にあたり、電子媒体による情報保存を認める基準として下記にある3つの条件が設けられており、これらを満たすことで、電子カルテの使用が有効になります。
- 1.真正性
- 2.見読性
- 3.保存性
故意または過失による虚偽入力、書換え、消去及び混同が行なわれないよう正しい情報であること。さらには、作成の責任の所在を明らかにする。
必要に応じ、情報内容を肉眼で見読可能な状態にできること。また直ちに書面に表示できること。
法令に定める保存期間内、その情報の復元ができる状態で保存すること。
「電子カルテ」導入における「メリット」と「デメリット」
かつてカルテは「紙に記載する」とされていました。そのため電子化が進んでいるとはいえ、長い間、紙のカルテを使ってきた医師は、電子カルテに「入力が面倒ではないか?」「設備に費用がかかる」といった不安感を抱いているようです。
そこで、電子カルテ導入時のメリット、デメリットを紹介していきましょう。
○メリット
- 再診時、患者の情報をすぐに呼び出すことができ、非常に効率的な診療を行うことが可能
- 手書きカルテと比べて、診療記録、検査結果、レントゲン画像などが見やすい
- 各種データ共有が容易になるため、円滑なチーム医療を実現
- 診療だけでなく、たとえば、昨年、花粉症の治療を受けた患者数など医療のデータベースとしても活用できる
- カルテの保存場所が不要になる。それに伴い、カルテの準備、搬送などに従事していた職員を配置転換できコスト削減につながる
- 事務作業の効率アップ。それに伴い、受付・会計も楽になる
- 院内の情報管理を一元化できる
- サービスによっては自動で間違いを指摘してくれるため、返戻が少なくなる
このように便利で効率的な診療が期待できる反面、電子カルテにもデメリットはあります。
○デメリット
- 災害や事故などで停電した場合、使うことができない
- 故障すると診療が難しい
- 導入コストやランニングコストが発生する
- 入力に慣れるまでに時間がかかる
- トラブルが発生した場合、大量のデータ漏洩、喪失の危険性がある
デメリットをカバーする方法としては、「厳重なセキュリティ対策」「予備サーバの設置」「停電等に対応する装置の確保」など、あらゆるリスクを想定し、事前に適切な対応をしておくことが大切です。また、コストについては人件費なども考えると長期的にはデメリットではなくなることもありますので、メリットとデメリットをクリニックや診療所の状況に合わせて考えつつ、導入を検討してみましょう。
「電子カルテ」で、さらに充実した医療提供
近年の医療業界は電子カルテを含め、遠隔診療や人工知能の活用など、かなりのスピードでICT化が進んでいます。それらを用いた効率化によって、患者さんとのコミュニケーションを充実させ、より温かみのある診療を目指していきたいですね。
アイディー・サポートでは、遠隔診療による医療のICT化、医者の求人、医者の開業コンサルタントについてのご相談を承っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。